立ち上がると腰が痛い方へ|その原因と解決法を解説
📋 この記事でわかること
- 立ち上がる時の腰痛が起きる原因と、理学療法士が最初に確認すること
- 腸腰筋以外にも原因がある、筋膜のつながりという考え方
- 今日からできるセルフケア(ストレッチ2選)
- ストレッチで改善しない場合に考えてほしいこと
デスクワークや長時間の移動のあと、立ち上がろうとした瞬間に腰がズキッとする。
そんな経験はありませんか。

実は、腰痛は厚生労働省の2022年 国民生活基礎調査で、男女ともに自覚症状の有訴者率が第1位となるほど多くの方が抱える症状です。
また、スポーツ庁の調査では、日本人の成人が平日に座っている時間は世界20カ国中もっとも長い1日7時間と報告されており、長時間の座位が腰への負担を高める大きな要因の一つとなっています。
「腰の筋肉が疲れているせいだろう」「年齢のせいかな」と思いながら、なんとなくごまかして過ごしている方も多いと思います。
ただ、立ち上がる時だけ痛みが出るというのは、体が何かを伝えているサインです。
この記事では、理学療法士の視点から原因と対処法をお伝えします。
Contents
立ち上がり時の腰痛、理学療法士がまず確認すること
「立ち上がると腰が痛い」という方の話を聞くとき、理学療法士としてまず確認するのは「どのタイミングで・どこに痛みが出るか」です。
立ち上がりという動作を細かく見ると、大きく3つの局面があります。
① 骨盤が動き始める(座位から体を前に倒す)
② お尻が座面から離れる
③ 膝と股関節が伸びて直立する
この3つのうち、どこで痛みが出るかによって、関与している部位が変わります。
特に②の「お尻が座面を離れる瞬間」に痛みが集中する場合、股関節周りの筋肉や筋膜に制限がかかっていることが多いです。
座位・立ち上がりを分析した研究では、腸腰筋をはじめとする股関節周囲筋群の働きが立ち上がりの安定性に大きく関与していることが示されています(大沼俊博ほか「座位,立ち上がりの評価とハンドリング」関西理学療法, 2018)。
腰そのものに原因があるケースもありますが、痛みが出る場所と原因のある場所が一致しないことも少なくありません。
腸腰筋だけが原因じゃない【筋膜のつながりという考え方】
立ち上がり時の腰痛の原因として、腸腰筋(背骨と太ももをつなぐインナーマッスル)の硬さがよく挙げられます。
長時間座り続けると腸腰筋は縮んだ状態が続き、立ち上がる際に急に伸ばされることで腰の骨を引っ張って痛みが生じます。
これは実際によく見られるパターンです。
ただ、腸腰筋だけが原因のケースは思ったより少ないのも事実です。
筋膜は全身をくまなく包んでいる膜状の組織で、一部が硬くなると離れた場所にも影響が出ます。
たとえば、
・太ももの前面(大腿筋膜張筋)の筋膜が硬くなる → 骨盤の動きに制限がかかる → 立ち上がりで腰に負担が集中する
・足部・足首の筋膜が硬くなる → 重心のかかり方が崩れる → 腰に代償が出る
このような筋膜の連鎖が原因になっている場合、腰だけをほぐしても根本的な改善につながりません。
「腰が痛い=腰だけの問題」ではない。
筋膜は全身でつながっているため、離れた部位の硬さが腰の痛みとして現れることがある。
立ち上がり時の腰痛に効果的なセルフケア【2選】
痛みの根本的な改善には専門家による評価が必要ですが、まずは自分でできるケアとして有効なものを2つ紹介します。
① 腸腰筋のストレッチ(股関節の前面を伸ばす)
長時間の座位で縮みやすい腸腰筋を伸ばすストレッチです。
1. 床に右膝をつき、左足を前に出して膝を90度に曲げる
2. 背筋を伸ばしたまま、体重をゆっくり前に移動させる
3. 右の股関節前面が伸びているのを感じながら30秒キープ
4. 反対側も同様に行う
※背中が丸まらないよう、骨盤を立てた状態で行うのがポイントです。
急に伸ばさず、呼吸を続けながらゆっくりと行いましょう。
② 殿筋のストレッチ(お尻の筋肉をほぐす)
お尻の筋肉(殿筋群)が硬くなると骨盤の動きが悪くなり、結果的に腰への負担が増します。
立ち上がりの動作にも大きく関わる部位です。
1. 椅子に座った状態で、右足のくるぶしを左膝の上に乗せる
2. 背筋を伸ばしたまま、ゆっくり体を前に倒す
3. 右のお尻が伸びているのを感じながら30秒キープ
4. 反対側も同様に行う
また、立ち上がりの動作時に体幹深部の筋肉(腹横筋・多裂筋)が正しく働くことが腰の安定につながります。
立ち上がる際にお腹を軽く引き込む意識(ドローイン)を加えることで、体幹筋の活動が高まることが研究で示されています(飯塚耕輔・對馬遼「呼吸様式が立ち上がり動作時における体幹筋の筋活動に与える影響」2024)。
こんな症状は整形外科へ!見逃してほしくないサイン
立ち上がり時の腰痛のほとんどは、筋肉・筋膜・姿勢の問題が背景にあります。
ただ、以下のような症状がある場合は、整形外科への受診を優先してください。
・お尻から足にかけてしびれや痛みが広がっている
・安静にしていても痛みが続く、または夜中に痛みで目が覚める
・足に力が入りにくい、つまずきやすくなった
・排尿・排便の感覚がいつもと違う
これらは神経が圧迫されているサインで、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症が疑われます。
整体や自己ケアより先に、医療機関での診断が必要です。
今すぐ腰痛をどうにかしたい方へ
ここまで紹介したセルフケアを試して、楽になった、という方もいると思います。
一方で、続けてはいるけど思ったような変化が出ない、という方もいるのではないでしょうか。
実は、ストレッチで腰痛が改善するには条件があります。
筋肉や関節の柔軟性が主な原因であれば、ストレッチは効果を発揮します。
でも原因がそこではない場合、どれだけ伸ばしても症状の根本には届きません。
腰痛には、立ち方や歩き方、座るときの重心の偏りといった日常の動作グセが深く関わっていることがあります。
毎日ストレッチをしていても、普段の動作で腰に負担がかかり続けていれば、効果は長続きしません。
そういった方には、一度専門家に直接見てもらうことをおすすめします。
ASTERRISEではどこに原因があるのかを体全体から確認して、あなたに合ったアプローチを考えていきます。
まとめ
✓ 立ち上がり時の腰痛は「どのタイミングで・どこに痛みが出るか」の確認から始まる
✓ 腸腰筋だけでなく、離れた部位の筋膜の硬さが腰痛の引き金になることがある
✓ 腸腰筋・殿筋のストレッチは手軽に試せる有効なセルフケア
✓ 繰り返す場合は「原因の特定」が先決|ストレッチの種類より評価が重要
✓ しびれ・安静時痛・排尿の異常は整形外科へ
立ち上がりのたびに腰が痛む、何度試しても繰り返す、という方はお気軽にご相談ください。